こえ
家や学校、外に出てもいろんな人が責めてくる。そればかりが続いたこれまでの数年間、何度も、過度なストレスが原因だと思うけど、耳が聞こえなくなった。そこから始めた手話。
一時保護をきっかけにやめた。
二度目の一時保護で首を吊った。
声が出なくなった瞬間が、しあわせだった。
みんなと離れたような、別の場所に居るような感覚が、心地好くて、みみもこえも、要らないなぁと、思ってしまった。
こえは、要らない。
言葉は嫌なことばかり招くし、いろんな大人に、揚げ足を取られる。考えて言葉を出すということが上手くできなくて、必死に言葉を探して、選んで、思い出して、繋ぎ合わせて、やっとはなしているのに、揚げ足を取られて、馬鹿にされたり、見下される。
こえは、そんなことしか私に教えてくれなかった。こえを、ほめてもらうことは多かった。軽音部の部長に、はじめてほめられた。
うれしくて、それは忘れられないことだった。
こえは、百の嫌なことと、一の嬉しいことを教えてくれた。
私は、百に負けた。
千にも、万にも、億にもまけた。
こえだけじゃ、防げないから、しにたいと思った。