定価5000円
顔も名前も、何もかも知らない男に、好きなだけ身体を弄ばれて、最後は性処理に使われて。
それでも、定価5000円。
男には、「5000円で買ってやったんだから有難く思え。」そんな一言、プレゼントを貰った。
多分、今ごろはネットにでも晒されているんじゃないかな。
お金のためなら、我慢できる。
5000円だって、2000円だって。
嫌になって、やめる時もあるけど、割り切って、時給だと思うと、高いから。もういちど。
謝って、予定付け直して、5000円貰う。
機嫌を損ねたら、4000円、3000円にもなるときもある。
不安定で、安価な、わたしの身体と貞操。
どんどん、安く買われていって、自分を失いそうになるときもあったり、自殺を考えたりしたり。。
それでも死ねない。結局は、自分を殺すなんて、出来ない。だって死にたいんじゃない。生きているのがつらいだけ。
死にたがりだなんて、かなしいこと言わないで。
大人はよく、勘違いする。
死にたいだなんて、思ったことないのに。
生きたい、しあわせになりたい。いつもそのことばかりで、腐った現実に、涙が止まらないだけで。
教師や大学生が、よく、私を買う。
だいたいは5000円。よくて2万。
「良いんですか?こんなにもらって。」
いくら渡されたって、そう言う。
「その値段に見合ったことをしたから払ったんだ」
「じゃあ3000円」「じゃあタダね。」
そういう返事が、多かった。
実際、いくら欲しいとかは言わなかったから、相手の言い値だけ貰ってたし、安い日なんて、500円。
お金を貰わない日もあった。
お金くださいって言うこと。
ほんとに、それだけは嫌で、絶対に言わなかったし、今だって言ってない。お金をせがむことだけは嫌いで、いろんな感情が、それだけは許さないって、片意地はってくれてる。
定価5000円。援交にそこまで詳しくないから、それが高いのか安いのかっていう、値段の相場も分からないし、顔も不細工な方だという自覚はあるから、言い値にしてるっていうのもある。
今してる援交は、下宿の人に全部渡したい。
私に居場所をくれた人に、もう少しでいいから、あと少しだけ、そばにいて欲しい。
もうちょっとだけ、背中を押したり、ほめたり、なぐさめたりして欲しい。
交通費が足りないのは、わかった。
だから、学校やボランティアでパンパンになった、限られた予定の片隅に、援交がはいってて。
化粧ポーチに、避妊具がふたつ。
5000円で、ピルって変えたっけ。
わたし以外の人のいのちは、お金じゃ買えない、いのちであって欲しい。って。